家庭内でClashを共有する方法は大きく二つ
家のスマホやPCで同じプロキシを使いたい場合、まず「Clashを動かす端末のポートを、ほかの端末から利用する方法」と「ルーター側で通信を中継する方法」を分けて考えます。前者は、Clash VergeやMihomoを起動したPCを家庭内のプロキシサーバーのように使い、スマホや別のPCのプロキシ設定にそのPCのIPアドレスとポートを入力する構成です。設定箇所が少なく、試験や少人数の利用に向いています。ただし、Clashを動かすPCの電源が切れたり、スリープしたりすると、共有している端末もプロキシを利用できなくなります。
後者は、Mihomo対応ルーターや旁路由(メインルーターの横に置く補助ルーター)で通信を処理する構成です。対応機器とネットワークの理解が必要になる一方、PCを常時起動しなくても運用しやすく、端末ごとの設定を簡略化できる場合があります。ただし、「ルーターにClashの設定を入れる」だけで家中の通信が自動的に切り替わるとは限りません。ルーターのCPU、ファームウェア、Mihomoコアの対応機能、現在のLAN構成を確認し、どの機器がデフォルトゲートウェイになるのかを先に決めることが大切です。
どちらの方式でも、家庭内のネットワークではClashを動かす機器と利用端末が相互に通信できる必要があります。ゲストWi-Fiや端末間通信を遮断する機能が有効だと、同じ家のネットワーク名につながっていても接続できないことがあります。共有の目的が一時的なものならPCのLANプロキシから始め、家族の端末を継続してまとめたい場合にルーター方式を検討すると、不要なネットワーク変更を避けられます。
構成を選ぶ:PC共有・旁路由・ルーター内蔵
まずは現在のネットワークを簡単に書き出します。インターネット回線の終端、メインルーター、Wi-Fiアクセスポイント、Clashを実行するPCの順に並べ、各機器のLAN側IPアドレスと接続先を確認してください。たとえばメインルーターが 192.168.1.1、PCが 192.168.1.20 なら、スマホからPCへ接続する際に指定するのはPCのアドレスです。ルーターのアドレスをプロキシサーバーとして入力しても、そのルーターでClashが動いていなければ接続先にはなりません。
PCで共有する方法は、スマホやタブレットのWi-Fi設定にある「プロキシ」欄へPCのLAN側IPとClashのHTTPまたはmixedポートを設定します。端末ごとに利用の有無を切り替えたい場合に扱いやすく、DHCPやゲートウェイを変更する必要もありません。反面、アプリによってはOSの手動プロキシ設定を参照しないことがあり、ゲーム、音声通話、独自通信を行うアプリが期待どおりに通らない場合があります。
旁路由方式では、メインルーターをそのまま使いながら、別の機器にClashやMihomoを動かします。利用者の通信を旁路由へ明示的に送る、端末ごとにゲートウェイを指定する、対応機能で透過的に中継するなど、実現方法はいくつかあります。一般家庭では、メインルーターと旁路由の両方がDHCPサーバーとして動いている状態を避けてください。二重にアドレスが配られると、端末ごとに異なるゲートウェイを受け取り、接続できたりできなかったりする原因になります。
ルーター内蔵型は、ルーターのファームウェアがMihomo系コアや必要なルール設定を正式にサポートしているかが出発点です。CPU性能が低い機器では、暗号化通信を多く処理した際に速度が下がったり、発熱や再起動が増えたりすることがあります。メーカーやファームウェアの画面に「プロキシ対応」と書かれていても、特定プロトコルやルール形式が非対応の場合があるため、利用中の設定との互換性まで確認しましょう。
PCのClashポートをLAN内へ安全に公開する
PC共有では、Clash側でLANからの接続を許可し、待ち受け先をLANから到達できる状態にします。GUIクライアントでは「LAN接続を許可」「Allow LAN」などの項目が見つかることがありますが、名称や利用できる項目はクライアントとコアのバージョンによって異なります。設定を変更したら、現在のプロファイルを再読み込みするか、コアを再起動して反映してください。画面上でチェックを入れただけで実際の待ち受けが変わったと思い込まず、接続ログやポートの状態も確認します。
次に、ファイアウォールで該当ポートへの接続が許可されているかを調べます。Windowsではネットワークの種類が「パブリック」になっていると、プライベートネットワーク向けの受信許可が適用されない場合があります。共有する家庭内ネットワークが信頼できるものか確認したうえで、必要なアプリまたはポートだけをプライベートネットワークに許可するのが基本です。ファイアウォールを全停止して解決する方法は、原因の切り分けとしても常用設定としても避けてください。
利用端末には、Clashを実行しているPCのLAN側アドレスと、実際に設定されているHTTP、SOCKS、またはmixedポートを入力します。mixedポートはHTTPとSOCKSの両方を扱える構成でよく使われますが、ポート番号を固定の値だと思い込まず、Clashの設定画面または有効なYAMLで確認してください。端末とPCが同じサブネットにいることも重要です。スマホがゲストネットワークに接続されている場合や、PCが別のVPNの仮想ネットワークへ優先接続されている場合は、正しいIPを入力しても到達できないことがあります。
LAN公開したプロキシポートをインターネット側へ開放するのは避けます。家庭内の利用を意図したポートをWAN側から接続可能にすると、第三者が無断で利用したり、家庭の回線を経由して通信したりする危険があります。ルーターのポート転送を追加せず、Clashの管理画面やコントロールAPIも外部公開しないでください。家族以外が接続できるWi-Fiを使う場合は、端末の範囲を制限する設定や認証の利用も検討します。
旁路由でゲートウェイやDHCPを変更する前に
ゲートウェイは、端末が自分のサブネット外へ通信するときに次の中継先として使う機器です。DHCPは端末へIPアドレス、サブネットマスク、ゲートウェイ、DNSなどを配布する仕組みです。DHCPの配布設定でゲートウェイを変更することは、端末の通信経路をまとめて変える操作にあたります。両者を混同して「DHCPを旁路由にすればClashを共有できる」と決めつけると、旁路由が上流へ通信できない構成になったり、端末がインターネットから切り離されたりすることがあります。
メインルーターをゲートウェイのまま残す構成では、利用端末がメインルーターへ送った通信を旁路由がどのように受け取るのか、経路と戻り道の両方を設計する必要があります。単に旁路由のIPをDNSとして配っても、DNS問い合わせだけが変わり、通常の通信が旁路由を通るとは限りません。反対に、全端末へ旁路由をデフォルトゲートウェイとして配る場合、旁路由には上流ルーターへの経路、適切なNATまたはルーティング、DNSの動作が必要です。製品固有の透過プロキシ機能を使う場合も、対応するネットワーク構成をその説明書で確認してください。
DHCPサーバーを切り替えるなら、変更前にメインルーターの管理画面を保存または記録し、IPアドレスの割り当て範囲、予約アドレス、DNS、ゲートウェイを控えます。新旧のDHCPサーバーを同時に有効にしないこと、旁路由自身の管理用IPをDHCP配布範囲と重ねないことが基本です。設定後に端末のWi-Fiをいったん切断して再接続し、端末が取得したIP・ゲートウェイ・DNSを確認します。反映が曖昧な場合は、端末側でネットワーク情報を更新します。
変更中に管理画面へ入れなくなった場合に備え、作業用PCは可能なら有線接続し、設定を戻す手順を手元に用意しておきます。遠隔操作だけでDHCPやゲートウェイを変更すると、操作途中で接続が切れたときに復旧が難しくなります。家族が利用中の時間帯を避け、まず一台だけで疎通を確かめてから対象を増やしてください。DNSだけを変えた場合、ゲートウェイも変えた場合、Wi-Fiだけを切り替えた場合のどれで結果が変わったかを記録すると、問題が起きても元の状態へ戻しやすくなります。
端末ごとにプロキシ利用と通信ルールを分ける
共有を始めるときは、すべての端末を一度に新しい経路へ移すのではなく、スマホ一台など小さな範囲から試します。手動プロキシ方式なら、利用する端末だけにPCのIPとポートを設定し、不要になったら設定をオフにできます。端末が複数ある場合は、PCのIPが変わって接続先がずれないよう、ルーターのDHCP予約などでアドレスを安定させます。固定IPを設定する場合は、既存端末との重複やルーターの配布範囲を確認してください。
ルーター側で複数端末を処理する場合は、端末単位の振り分けが可能かを確認します。実装によっては端末のIPアドレス、MACアドレス、送信元ネットワークなどを基準にポリシーを分けられますが、すべてのGUIやファームウェアで同じ機能が使えるわけではありません。まず「特定端末をプロキシ経由にする」「別の端末は通常経路にする」という二つのケースを作り、どの条件でルールが一致するのかを接続ログで確かめます。ルールは上から順に評価されるため、広い条件が先に一致すると、後ろに書いた端末別の設定が使われないことがあります。
DNSの扱いにも注意が必要です。端末がルーターとは別のDNSサーバーを直接利用する構成では、名前解決の経路と実際の通信経路が異なり、期待したルール判定にならない場合があります。IPv6が有効な家庭では、IPv4だけを確認して「共有できた」と判断しないでください。Clashや旁路由がIPv6通信を処理しない構成だと、一部の通信が意図しない経路へ抜ける可能性があります。IPv6をどう扱うかは、機器の対応状況と家庭のネットワーク設計に合わせて決めます。
ゲーム機、テレビ、スマート家電は、手動プロキシ欄がなかったり、独自の通信方式を使ったりすることがあります。そうした端末も対象にするなら、アプリのプロキシ設定だけで済むか、ルーターの透過処理が必要かを先に確認します。機器ごとに接続できる範囲が異なるため、Web閲覧だけを試して全アプリが同じ経路になると考えるのは早計です。対象端末と対象アプリを決めて検証すると、必要以上に家庭内ネットワーク全体を変更せずに済みます。
動作確認とトラブル時の戻し方
設定後は、端末のブラウザーで通常のWebページを開く前に、Clashの接続一覧やログを表示しておきます。端末から一度だけ接続を発生させ、想定した送信元と宛先が記録されるか、どのルールやポリシーが選ばれたかを確認してください。接続一覧に何も出ない場合は、まず端末からClashを動かす機器のIPとポートへ到達できるかを疑います。接続は見えるのに失敗する場合は、選択されたポリシー、DNS、上流側の状態を順番に調べると、問題の層を絞りやすくなります。
- 接続自体ができない:IPアドレスの入力ミス、ポート番号、ファイアウォール、ゲストWi-Fiの端末間遮断を確認します。
- 一部のアプリだけ動かない:そのアプリがシステムプロキシを使うか、手動設定に対応するか、ルーターの透過処理が必要かを確認します。
- Webサイト名の解決に失敗する:端末とルーターが受け取っているDNS、ClashのDNS設定、IPv6の扱いを切り分けます。
- 設定変更後に家中で通信できない:DHCPサーバーが重複していないか、ゲートウェイのIPが正しいか、変更前の設定へ戻せるかを確認します。
検証では、一度に一つの設定だけを変更し、成功・失敗と変更内容をメモしてください。PC共有から旁路由へ移行する場合も、まずPCの手動プロキシで動作を確認し、その後に対象端末を増やすと比較が容易です。Clashを止めたときに端末が通常のインターネット接続へ戻るかも確認しておくと、家族が共有設定を忘れたときの影響を把握できます。ネットワークの変更が原因で復旧できない場合に備え、メインルーターの管理画面へ有線でアクセスする方法も確認しておきましょう。
端末ごとにプロキシを入力するだけの方法は簡単ですが、台数が増えると設定の更新や例外管理が手間になり、一般的なVPNアプリもルーター全体のDHCPや端末別ルールまでは面倒を見ないことがあります。Clash V.COREなら、Clash系クライアントのプロファイルやルールを使い、PC共有から家庭内の通信整理まで段階的に試せます。いきなり家中のゲートウェイを変更するのではなく、まず一台でポートと接続ログを確かめたい方は、必要なクライアントを選べるダウンロードページから始めてみてください。