TUN モードとは何か?その動作原理
Clash の TUN モード は、OS レベルで仮想ネットワークカード(TUN インターフェース)を作成し、すべてのトラフィックを Clash カーネルに強制的に引き込む機能です。通常の HTTP プロキシモードでは、アプリケーション側がプロキシ設定をサポートしている必要がありますが、TUN モードでは プロキシ非対応のアプリ や、ゲーム、ターミナル、システムアップデートなどのトラフィックもすべて Clash のルールに従って制御できます。
2026 年現在、Windows、macOS、Linux の各プラットフォームで Mihomo (Clash Meta) カーネルが広く採用されており、TUN モードのパフォーマンスと安定性は飛躍的に向上しました。しかし、TUN インターフェースを有効にするだけでは不十分です。ネットワークスタックの深い部分でトラフィックを傍受するため、システム全体のルーティングテーブルや DNS 解決プロセスに干渉することになるからです。
DNS 漏洩の脅威と TUN モードでの発生原因
DNS 漏洩 とは、トラフィック自体はプロキシを経由しているにもかかわらず、ドメイン名の解決(DNS クエリ)がローカルの ISP(インターネットサービスプロバイダー)の DNS サーバーに送信されてしまう現象を指します。これにより、あなたがどのサイトにアクセスしようとしているかが ISP やネットワーク監視者に筒抜けになってしまいます。
TUN モードにおいて DNS 漏洩が発生する主な原因は、DNS ハイジャック が不完全であることです。Windows などの OS は、複数のネットワークアダプターがある場合、どのアダプターの DNS サーバーを使用するかを自動的に決定します。もし Clash の仮想ネットワークカードよりも物理的なネットワークカード(Wi-Fi やイーサネット)の優先度が高いと、DNS クエリが Clash をバイパスしてしまいます。
- システムの DNS 設定: OS が Clash の提供する DNS サーバー(通常 190.31.0.1 など)を優先していない。
- IPv6 の干渉: IPv6 が有効な場合、IPv6 経由で DNS クエリが漏洩することが非常に多いです。
- ブラウザの独自設定: Chrome や Firefox の「セキュア DNS」機能が Clash をバイパスして直接外部へ問い合わせを行う。
Fake-IP vs Real-IP:どちらを選ぶべきか
Clash の DNS 設定には fake-ip と redir-host(現在は Real-IP 的な挙動)の 2 つのモードがあります。TUN モードを最大限に活用するには、Fake-IP モードを強く推奨します。
Fake-IP モードの利点
Fake-IP モードでは、Clash はドメイン解決要求に対して即座に「偽の IP アドレス」(例:198.18.0.x)を返します。実際の DNS 解決は、トラフィックが Clash のプロキシサーバーに到達した時に行われます。これにより、DNS 解決を待つ時間がゼロ になり、ブラウジングの体感速度が大幅に向上します。また、DNS クエリ自体がローカルネットワークに流れないため、構造的に DNS 漏洩を防ぐことができます。
Real-IP モードの注意点
Real-IP モードでは、Clash が実際に DNS 解決を行ってから結果をアプリに返します。これは従来のネットワーク挙動に近いですが、DNS 解決にかかる待ち時間(レイテンシ)が発生し、また設定が複雑になると DNS 漏洩のリスクが高まります。特定のゲームや、IP アドレスを直接チェックする古いアプリケーションを除き、現代の環境では Fake-IP が最適解です。
プロフェッショナルな DNS 設定例
以下に、DNS 漏洩を完全に防ぎ、高速なレスポンスを実現するための YAML 設定例を示します。これは Mihomo (Clash Meta) カーネルに最適化されています。
Highly Secure TUN & DNS Configuration
dns:
enable: true
listen: 0.0.0.0:1053
ipv6: false # DNS 漏洩防止のため false を推奨
enhanced-mode: fake-ip
fake-ip-range: 198.18.0.1/16
nameserver:
- https://doh.pub/dns-query
- https://dns.alidns.com/dns-query
fallback:
- https://8.8.8.8/dns-query
- https://1.1.1.1/dns-query
proxy-server-nameserver:
- 119.29.29.29
nameserver-policy:
"geosite:cn": https://doh.pub/dns-query
"geosite:google,youtube,telegram": https://8.8.8.8/dns-query
tun:
enable: true
stack: mixed # gvisor または system も選択可能
auto-route: true
auto-detect-interface: true
dns-hijack:
- any:53
- tcp://any:53
この設定のポイントは、dns-hijack によってポート 53 へのすべての DNS トラフィックを強制的に Clash 内部へ引き込んでいる点です。また、nameserver-policy を使用することで、国内ドメインは高速な国内 DNS サーバーで解決し、海外ドメインは安全な海外 DNS サーバーで解決する「分流解決」を実現しています。
TUN モードのトラブルシューティング
TUN モードを有効にした後にインターネットに接続できなくなった場合、以下のチェックリストを確認してください。
- 管理者権限: Clash を管理者権限で再起動しましたか?
- 仮想カードの競合: 他の VPN アプリ(AnyConnect, FortiClient 等)がインストールされていると、仮想ネットワークカードのドライバーが衝突することがあります。
- システムルートのクリーンアップ: Clash が異常終了した場合、ルーティングテーブルに不正なエントリが残ることがあります。PC を再起動するか、ネットワークアダプターを無効・有効にしてみてください。
- ブラウザのセキュア DNS: Chrome の設定で「セキュア DNS を使用する」をオフにしてください。これがオンだと Clash の DNS 設定が無視されます。
高度なヒント: stack: mixed 設定は、TCP にシステムスタックを使用し、UDP に gvisor スタックを使用するモードです。これは互換性とパフォーマンスのバランスが最も良く、多くの環境で推奨されます。
結語
Clash の TUN モードと DNS 設定を正しく構成することは、安全で快適なインターネット環境を構築するための第一歩です。特に Fake-IP と dns-hijack の組み合わせは、DNS 漏洩を物理的に遮断するための強力な武器となります。最初は設定が複雑に感じるかもしれませんが、一度マスターすれば、どのようなアプリケーションでも意識することなく安全な通信が可能になります。
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